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【イベントレポート】2023年2月15日「話す力を育成する官民合同シンポジウム」を開催しました。2023.3.3

ピックアップ 効果測定

2月15日、「話す力を育成する官民合同シンポジウム」を、都内の会場とオンラインで開催しました。このシンポジウムは日本財団の助成により行っている自治体向けの「Speak Up! プログラム」の成果報告を目的として開催したものです。

「Speak Up! プログラム」は、子どもの「話す力」および教員の意識の向上を目的として、自治体が選定した公立の指定校に対して複数回のモデル授業と教員研修を実施するプログラムであり、2022年度は1都11市区町の自治体で導入し、多くの子どもたちにこのプログラムを届けることができました。

社会に出ればコミュニケーション能力がもっとも大事とされ、就活では面接を課す会社がほとんどであるにも拘らず、一般的な日本人は人前でプレゼンすることも人と対話することも苦手。それは教育課程に体系的に存在しないことが主因であり、加えて子ども若者の自己効力感が低い点、学校が心理的安全性の担保されない場所になっている点もこの問題に拍車をかけているとアルバ・エデュでは分析しています。これは早期に是正されるべき立派な社会課題と考え、Speak Up!プログラムを開発し、9つの自治体で効果を測定しました。

まず、定量分析の視点から三菱UFJリサーチ&コンサルティングより、定性分析の視点から福岡教育大学山元教授より、同プログラムの効果測定について報告を受けました。(別添:調査報告書

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング 野田鈴子様】

教員研修による先生方の変化と子どもたちへのモデル授業の実施を通して、「プレゼンの重要性」や「プレゼンへのポジティブさ」「プレゼンに対する自信」「世の中を知りたい、社会の役に立ちたいという思い」が有意に上昇していた。他の検証結果からは、実際に発表会でプレゼンすることで自己開示が進み、学級の「心理的安全性」が高まる可能性もあることが分かった。

【福岡教育大学教授 山元悦子様】

授業後の児童生徒に対して行ったアンケートでは、「社会に役立ち、社会を良い方向にしていきたい」「世界を変えるためにプレゼンはある」など、社会に自ら働きかける意欲が湧いていることが伺えた。また、「プレゼンは自分の気持ちを自由に伝えられるものだ」「主役は自分」など、プレゼンの意義を認識している様子も読み取ることができた。アルバのプレゼン学習は、勇気をもって自己開示することの快さ、聞いてもらうことの嬉しさを体験することができる。今後は、現場の教員との連携により、より効果を高めていきたい。

次に、「Speak Up! プログラム」を導入した自治体の代表(さいたま市、文京区、戸田市、富山市)からプログラム導入についての報告を経て、意見交換会を実施しました。

【さいたま市教育長 細田眞由美様】
市内のある小学校では「プレゼンは苦手だったけれど、すごく好きになった」といった子どもの声や「自分の考えを深める活動をすると、こんなに子どもたちが生き生きと発表するのかと驚いた」といった教員からの感想があった。「Speak Up! プログラム」は、子どもたちが自信っをもって考えを伝えられるようになるプログラム。能動的に学び続ける力が育まれるのではないか。

 

【文京区長 成澤廣修様】

文京区では2017年から同プログラムを導入。まず小規模の公立中から導入し、その後プレゼン教育の必要性の高まりを受け、区の重点施策としてプログラム開発、幼小中への導入を決めた。「うちの子が公開の授業で手を挙げているのを初めて見た」と保護者から声が上がるなど、内向的な性格だった子どもたちにも大きな変化が出てきている。リスキリングとして地域の人材を活用する取り組みも行っており、今後も新たなカリキュラムの開発などにも共に取り組んでいきたい。

 

【戸田市教育長 戸ヶ﨑勤様】
戸田市では課題解決型学習(PBL)を取り入れた授業づくりを推進しており、16年からは市内の小中学生全員が参加するプレゼンテーション大会を実施している。同市立美谷本小学校では2月3日から教員研修が始まり、研修を受けた教員からは「明日からこの学校は間違いなく変わります」と期待の声も上がった。「話す力」の育成は、国語だけでなくあらゆる教科で意図的・計画的に行っていく必要がある。あらゆる教育活動を「話す力」を通して見つめ直し、すべての教科で教科横断的に無理なく着実に「話す力」を育んでいける意図的な仕組みづくりが必要だ。

 

【富山市教育長 宮口克志様 】

2022年7月にアルバ・エデュと連携協定を結び、児童及び生徒の「話す力」や「伝える力」の向上、教員の資質向上に資することを目的として教員研修やモデル授業を行った。研修については市内すべての教員が自主研修として試聴できるようオンデマンド配信を実施。拠点校の教員からは「読み原稿に頼るのではなく、自分の思いを相手に伝えるために工夫して話すようになった」など成長が見られたと聞いている。次年度も指導を継続し、子どもたちに考えや思いを表現する力を高めていくことが子どもの主体性を育むと考える。

また、会の総括にあたり、日本財団木田様と文部科学省常盤木様からもお言葉を頂戴しました。

【日本財団 木田悟史様】

やっていく価値が高い取り組みとして今後に期待している。異質なものを受け入れて乗り越えていく力が今ほど求められていることはない。この取り組みを益々発展させ、公教育の中で形あるものとして実施していただきたい。

【文部科学省 初等中等教育局 教育課程課長 常盤木祐一様 】

どの子どもにとっても学校が行きたくなるような場所にしていくことが大切だと考える。みんなが自分の気持ちを伝えることができる、みんながそれを聞いてくれる学校づくりの一つのツールとして、アルバの取り組みはあるのではないか。教育委員会や学校の教育活動の上に、子どもたちへの想いを強く持つアルバのような団体の取り組みがあることで、益々子どもたちに対する教育効果は上がっていく。

アルバ・エデュでは、引き続き複数の自治体でSpeak Up!プログラムの効果を継続して測定します。今後は、教材や指導書への当プログラムの導入や、公教育向けのオンライン授業も活用しながら、より多くの学校や子どもたちに同プログラムを届けていきたいと考えています。「話す力」が全ての教科における土台となり、一人の子どもも取り残さず話せる日が来るまで、活動を広めていくために尽力してまいりたいと思います。

【実施概要】

日時:2023年2月15日(水)13:00-15:00

場所:AP 虎ノ門3階 ROOM【J】東京都港区西新橋1-6-15NS 虎ノ門ビル3F

主催:一般社団法人アルバ・エデュ

登壇者:9名

オンライン視聴者:33名

【登壇者】※順不同

  • 文部科学省 初等中等教育局 教育課程課長 常盤木 祐一
  • 文京区長 成澤 廣修
  • 日本財団 経営企画広報 部部長 木田 悟史
  • 埼玉県 さいたま市 教育長 細田 眞由美
  • 埼玉県戸田市教育長 戸ヶ崎 勤
  • 富山県富山市教育長 宮口 克志
  • 福岡教育大学 教授 山元 悦子
  • 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング 野田 鈴子
  • 一般社団法人アルバ・エデュ 代表理事 竹内 明日香

 

 

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